Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Leggi 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.213 caratteri · 325 schermate

Aozora Bunko

「いかん! これや、いかん」

老先生は、水面を見つめて、ひどく、いらいらした顔いろで、

「女狐め! 逃げる気で飛びこんだならばよいが、のがれぬところと見限りをつけて、身を投げたのだとすると、一大事だわえ」

と、呟いた。

彼の狼狽は、その点にあった。折角、召捕っても、それが死骸で揚がったのでは、郁次郎を救う有力な反証を自白させることができない。

老先生は、せわしい眼で、うしろを見まわした。

「御つり舟師、舟辰」

と、文字だけがかすかに読めて、灯の消えている軒行燈が、ふと、眼にとまった。

どん、どん、どん――

そこの戸を、あわただしく叩いて、

「これ! これ! 釣舟屋。ここを開けい、火急だ。火急だ」

――家のなかで、答えがあったと思うと、老先生は、突然、その腮の白髯を逆しまに上げて、

「うっッ」

と、虚空をつかんだ。

「な、な、なに者ッ? ……」

よろよろと、彼は、うしろ倒れになりながら、自分の喉を締めつけた強い拇指の主を、吊り上がった眸で、肩越しに睨んだ。

「…………」

うしろから、ふいに、老先生の喉を締めた男は、息をのんだまま、口をきかなかった。そして、断末苦にガタガタと骨をふるわしている江漢の四肢の爪から、だんだんに、その生命力が滅消してゆくのを、楽しむように、抱えていた。