Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Leggi 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.213 caratteri · 325 schermate

Aozora Bunko

彼が、今朝の目前に迫っている郁次郎の命を救いたい一心に、一代の熱と愛と涙とをもって、舟辰の家の二階で、咄嗟に、書き綴った願文であった。

「采女、馬を曳け」

「はっ」

采女は、その、唐突さに、うろたえた。

しかも、主人の左近将監の眼には、涙がいッぱいに溜っていた。彼は、読み下したその書状を、袂に、まろめこむが早いか、采女が、急いで曳き出して来た駒にとび乗って、通用門から、まっしぐらに、駈け出した。

――町にはまだ、朝霧があった。

またたくうちに、彼の駒は、三宅坂の松平信明の屋敷を訪れたが、折悪しく、信明はその前夜、代々木の別業へ移って静養中ということなので、すぐ引っ返して、そこからほど近い麹町の方へ馬を飛ばした。

「御老中は、お目ざめでござるか。奏者番、小笠原左近将監です。早朝なれば、お寝衣のままにても苦しゅうござりませぬ。それほどに、一刻を争うのです」

次席老中太田備中守は、幸いに、もう書院に出て、朝の苦茗をすすっていた。

面談は、五分間と、かからなかった。

備中守から、一通の書付をとると、左近将監は、ふたたび悍馬に鞭を打って、真一文字に、南町奉行所の正面のまえまで走って来た。