Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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すさのおのみこと

素戔嗚尊

芥川 竜之介

Leggi 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 42.917 caratteri · 86 schermate

Aozora Bunko

」と云うより早く、後へ引き残した女の裳を、片手にしっかり握りとめた。女は思わずそこへ倒れて、もう一度短い悲鳴を漏らした。が、それぎり身を起す気色もなく、また前のように泣き入ってしまった。

彼は纜を松の枝に結ぶと、身軽く岩の上へ飛び上った。そうして女の肩へ手をかけながら、

「御安心なさい。私は何もあなたの体に、害を加えようと云うのじゃありません。ただ、あなたがこんな所に、泣いているのが不審でしたから、どうしたのかと思って、舟を止めたのです。」と云った。

女はやっと顔を挙げて、水の上を罩めた暮色の中に、怯ず怯ず彼の姿を見上げた。彼はその刹那にこの女が、夢の中にのみ見る事が出来る、例えばこの夏の夕明りのような、どことなくもの悲しい美しさに溢れている事を知ったのであった。

「どうしたのです。あなたは路でも迷ったのですか。それとも悪者にでも浚われたのですか。」

女は黙って、首を振った。その拍子に頸珠の琅が、かすかに触れ合う音を立てた。彼はこの子供のような、否と云う返事の身ぶりを見ると、我知らず微笑が唇に上って来ずにはいられなかった。が、女はその次の瞬間には、見る見る恥しそうな色に頬を染めて、また涙に沾んだ眼を、もう一度膝へ落してしまった。