Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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すさのおのみこと

素戔嗚尊

芥川 竜之介

Leggi 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 42.917 caratteri · 86 schermate

Aozora Bunko

三十一

その間に空模様が変った。対岸を塞いだ山の空には、二三度鍵の手の稲妻が飛んだ。続いて殷々と雷が鳴った。彼はそれでも泣きながら、じっと砂の上に坐っていた。やがて雨を孕んだ風が、大うねりに岸の熊笹を渡った。と、俄に湖が暗くなって、ざわざわ波が騒ぎ始めた。

雷が猶鳴り続けた。その内に対岸の山が煙り出すと、どこともなくざっと木々が鳴って、一旦暗くなった湖が、見る見る向うからまた白くなった。彼は始めて顔を挙げた。その途端に天を傾けて、瀑のような大雨が、沛然と彼を襲って来た。

三十一

対岸の山はすでに見えなくなった。湖も立ち罩めた雲煙の中に、ややともすると紛れそうであった。ただ、稲妻の閃く度に、波の逆立った水面が、一瞬間遠くまで見渡された。と思うと雷の音が、必ず空を掻きむしるように、続けさまに轟々と爆発した。

素戔嗚はずぶ濡れになりながら、未に汀の砂を去らなかった。彼の心は頭上の空より、さらに晦濛の底へ沈んでいた。そこには穢れ果てた自己に対する、憤懣よりほかに何もなかった。しかし今はその憤懣を恣に洩らす力さえ、――大樹の幹に頭を打ちつけるか、湖の底に身を投ずるか、一気に自己を亡すべき、最後の力さえ涸れ尽きていた。