Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

パンドラのはこ

パンドラの匣

太宰 治

Leggi パンドラの匣 (パンドラのはこ) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 192.644 caratteri · 386 schermate

Aozora Bunko

ゆっくり歩いて、小梅橋のバスの停留場が近くなった頃、僕は実に意外な事を聞いた。お母さんと、マア坊が、歩きながらよもやまの話の末に、

「場長さんが近く御結婚なさるとか、聞きましたけど?」

「はあ、あの、竹中さんと、もうすぐ。」

「竹中さんと? あの、助手さんの。」と、お母さんも驚いていたようであったが、僕はその百倍も驚いた。十万馬力の原子トラックに突き倒されたほどの衝動を受けた。

お母さんのほうはすぐ落ちついて、

「竹中さんは、いいお方ですものねえ。場長さんはさすがに、眼がお高くていらっしゃる。」と言って、明るく笑い、それ以上突っ込んだ事も聞かず、おだやかに他の話に移って行った。

僕は停留場で、どんな具合いにお母さんとお別れしたか、はっきり思い出せない。ただ眼のさきが、もやもやして、心臓がコトコトと響を立てて躍っているみたいな按配で、あれは、まったく、かなわない気持のものだ。

僕は白状する。僕は、竹さんを好きなのだ。はじめから、好きだったのだ。マア坊なんて、問題じゃなかったのだ。僕は、なんとかして竹さんを忘れようと思って、ことさらにマア坊のほうに近寄って行って、マア坊を好きになるように努めて来たのだが、どうしても駄目なんだ。