Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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パンドラのはこ

パンドラの匣

太宰 治

Leggi パンドラの匣 (パンドラのはこ) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 192.644 caratteri · 386 schermate

Aozora Bunko

3

庭の池を見ている様子であった。僕はベッドに腰かけて、さっそく食事をはじめた。あたらしい男は、おかずに不服を言わないものである。きょうのおかずは、めざしと、かぼちゃの煮つけだ。めざしは頭からバリバリ食べる。よく噛んで、よく噛んで、全部を滋養にしなければならぬ。

「ひばり。」と音声の無い、呼吸だけの言葉で囁かれて、顔を挙げたら、竹さんは、いつのまにか、両手をうしろに廻して窓に寄りかかってこちら向きになっていて、そうして、あの特徴のある微笑をして、それから、やっぱり呼吸だけのような極めて低い声で、「マア坊が泣いたって?」

3

「うん。」僕は普通の声で返辞した。「なやみがあると言ってた。」よく噛んで、よく噛んで、きれいな血液を作るのだ。

「いやらしい。」竹さんは小さい声で言って顔をしかめた。

「僕の知った事じゃない。」あたらしい男は、さっぱりしているものだ。女のごたつきには興味が無いんだ。

「うち、気がもめる。」と言って、にっと笑った。顔が赤い。

僕は、少しあわてた。ごはんを、なま噛みのまま呑み込んでしまった。

「たんと食べえよ。」と、低く口早に言って、僕の前を通り、部屋から出て行った。