Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate

Aozora Bunko

喉が痛むほど空気が乾燥する。――晴れても曇っても、冬が日一日と溶け去るけはいは争われなかった。街路樹の梢は、いつか靱やかな撓みを持ち始めた。買物がてら通りを歩いている時など、ふと、高い高い塔の頂にヒラヒラはためいている赤と緑の旗が目に留る。何もあるのではない。ただ、空高く見なれた一つの星条旗がひるがえっているばかりだ。けれども、人はその旗の色や、その空から、今日ばかりはことさら何か閃く歓ばしさのようなものが、自分の心にとび移るのを感じる。訝りつつ瞳がなごむ。……それこそ春の遠慮ぶかい先触れだ。

その日は、前夜降った淡雪が、大学の芝生の上や鋪道の日かげに積っていた。

伸子は、午餐を、ある実業家の夫人に招待された。伸子は、思っても思っても思い尽きないものをしっかり心の裡に抱いて、尋常な人々のあいだに坐っている楽しさから、愛嬌よく、よく喋り、よく笑った。

二時から、ミス・プラットの時間があった。けれども、前の晩、おそくまで佃といた上、今日招かれたので、何も支度ができていない。

五分ほど早めに着いたのに、ミス・プラットは、いつも彼女らの坐る側部屋の長椅子で、もう伸子を待っていた。