Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
「暗すぎませんか」
「――でもいいでしょう? ここ……」
客間と玄関だけが、昔、茶人の建てた時のままの建築で遺っている。その一部である古風な小庭に面したその部屋は、長年の塵をかぶって柱さえ破れていた。伸子は、新たに掃除した古畳の上に据えた机に向い、佃は、上り框に腰かけ――
「その松の下へ蕗の薹が出るのよ、春」
「――おや」
「なあに」
「蜥蜴」
初夏の日が庭の苔に落ち、刷毛目ついた羽目の白壁を照すのを眺めつつ、彼らはしゃべった。
幼年時代の思い出が、この部屋に坐っていると、伸子の心に次々に甦って来た。
夏、独りで遊んでいた時、飛石に置いてある四角い瓦のようなものを何心なくめくった。下にこんもり、ぽくぽく乾いた土が盛り上っていて、驚いたことには、そこに御飯つぶのようなものが沢山あった。蟻があわてて駈け廻って、その御飯粒をくわえ、サワサワ音が聞えそうに、足を動かして逃げ出した。
思いがけない光景に、伸子はびっくりした。が、見ているうちに面白さが募り、彼女は、竹の棒で、もう一つ瓦を引くり返して見た。そこは空っぽだ。もう一つ。あった! あった! 御飯粒みたいな物を見る瞬間の官能的なセンセーションを享楽しつつ、暑さの中を次から次へ、瓦をめくって歩いた。