Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
伸子は、夫が、言葉でする愛の誓で、愛す愛すとだけ云えば万事解決する、と思っているのが味気なかった。愛しても、食物はいるように、愛しても、伸子には活溌な生存がいるのであった。毎日の細かいことでは、互の心持について、まるでやり放しでとり合わず、伸子がやり切れなくなって涙をこぼすと、急に熱烈に、これほど愛している心が通じないかと訴えられる。――伸子は、途方に暮れて云うしかなかった。
「ね、こういうことは、言葉に現せない毎日毎日の感じから来るのよ……あなたのはまるで、一旦自分は愛していると思い込んだら、頑固に思い込む程度の強さを、愛の強さだと勘違いしていらっしゃるようね」
「ああ、そんな皮肉を云う! じゃあそう思っていらっしゃい」
それ故、犬のようにただ並んでいるのが侘しくなり、
「ねえ」
と呼びかけはしても、彼女は大抵あとの言葉を云わずじまいにした。佃はそれを怪しもうともしない。――これが、平和な家庭生活というものであろうか。
伸子は、沼に浸っているような生活気分に、たえ難くなって来た。
外の世界は五月だ。明るい溌剌とした五月だ。自分の心もかつてはこのようでなかったか?