Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
彼女は悲しくも、腹立たしくもなかった。その程度を越して、髄まで傷けられた感情で冴えかえった。
多計代は、
「黙っていちゃあ分らないよ」
と云った。硬ばってしまったようで、伸子は口がきけなかった。
「……私の考え違いだったらあやまりますがね」
暫くして、伸子はかすれたような声で咳払いし、夫に云った。
「……あなた、あっちへいらしって頂戴」
母が佃に謝れるわけはない。佃が、自分の夫となったというだけの因縁で、このような屈辱を堪えるわけはない、と伸子は思った。
「いらっしゃい」
佃は、腕組みをしたまま、
「うむ」
とうなった。彼が不決断でいるうちに、多計代が、
「話もすまないのに、お前の勝手でそんなことはさせられません」
と、云った。
「――でも母様は、後へ引けない方でしょう?」
「引くわけがないから引かないのです、――お前のように自分が悪いと思わない者はない!」
激情的な意地っ張りで、多計代は伸子に謝れ、謝れと強いた。これから一切、家庭に関するらしいことは書かないと誓えと迫った。それは伸子にとって、不可能なことであった。今、かりに気やすめの謝りや誓いをしても、それは、いつか必ず破れることだ。