Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
それを、不自然で、また不必要なほど、私のため、私のため、と云って下さるからいけないんじゃあないかしら。生れつき通りになりましょうよ。ね、そうしたらきっとさっぱりしてよ。二人の間も晴れ晴れしてよ。あなたはあなたとして、十分生きる権利を、正面から主張なさればいいのよ」
佃の返事はきまっていた。
「どうにでもお考えなさい。私の本性はこれきりだ。――私の覚悟は、もう結婚する時からきまっている。その決心を、自分がいいと思った時に実行するだけです」
決心というのは、死ぬとか、すべてを放棄して田舎に引込む、とかいう意味なのであった。このような言葉も、伸子は、どこまで本気にすべきか判らず、黙りこむしかなかった。本当かと思うとこわかった。この心理的かみ合いは、どちらかが死ぬまで、では続くのか、――しかし、おどかされているのかと思うと、伸子は、にっこり笑って片足引き、お辞儀をし、
「そうお、ではどうぞ」
と云って見たいようであった。――
七月になった。
佃は、勤め先から、関西へ出張することになった。短い旅行のために入用なものが、ちっとも揃っていなかった。互の間が不穏な、底鳴りのしている有様ではあったが、そのため却って、みっともない旅行はさせにくい気がした。