Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate

Aozora Bunko

樹間の山道から本道へ出た登山路はすっかり開けていた。女連れや子供づれの湯治客が、暢気に熊笹の間を縫って行くばかりではない。二間半ほどの道の一方によせて、トロッコの軌道が敷けていた。

「まあ、ずっと上まであるのね、何が通るんでしょう」

十五ばかりの少年をつれ、中歯を穿いた男が、伸子らの横を歩いていたが、

「よく開けたもんですなあ。このトロッコで硫黄を麓の工場まで降すんです――よほどの産額になるらしいですよ」

と、それをききつけて云った。

登るにつれて、背の高い樹木が減った。日光が暑くなったので、伸子は洋傘をさした。笹の繁った山腹、キラキラ碧い夏空の下で、たった一点赤い自分の洋傘の色は、どんなに活々美しく見えるだろう。伸子は、子供らしい物珍しさで亢奮した。風景も、湯本までの自動車から眺めたより、この辺はずっと雄大であった。紆曲の緩やかな笹山が、目路を遮る何ものもなく、波うちつづく。遙か遙か下界に、八月の熱気でぼーっと、水色がかった真珠色に霞んだ地平が見晴せた。道の工合で前に行く人の姿は見えず、時々話声だけ聞える。その人声が、山路の明るい静寂の深さを感じさせた。