Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
「どうです? 面白い?」
「これ」
伸子は、薔薇から目を放し、さっきから片手に持ったなりでいた本をあげた。
「――冒険物語よ……春浪みたいな書き出しだわ」
「でも、古い人でしょう、その著者は……」
「古いことは古いらしいわね――」
伸子は、緒言のところを翻した。
「四世紀頃ですって」
「ふうむ……」
佃は、それはそれで打ち切り、十坪ばかりの庭の庭石の真央に立って、あちらこちらを見まわした。彼は何か見つけ、不興げな表情でつくばいのそばへ行った。
「仕様がないな――またこんな足跡をつけている」
彼は、スリッパアの古いのをはいた片足で、ぺたぺたと一箇所を踏みつけた。
「とよ! とよ!」
木戸から、とよが首をのばして、
「お呼びになりましたか」
と云った。
「――お前今朝、下駄でここを踏んだかい?」
「……さあ」
とよは、縁側にいる伸子の方にながしめをし、困却したように、佃の踏んでいる場所へ目を落した。
「めちゃめちゃに歩かないでくれ、私ばかり、一生懸命に掃除しているんじゃないか」
「はい」
「――花鋏をもって来てくれ」
鋏を受取りながらも、佃は念を入れて、足跡のことを繰り返した。伸子は、そばにいて、妙な極り悪さを感じた。