Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
その度に、同じ新しい鋭い全身的な不快が伸子の胸に湧いた。慢性腎臓炎にかかっても、佃はやはり聖書を片手に、このような表情をするであろうか? 日本へかえってからは、平常聖書など読まず日を送っていた佃が、床についてから、自分を最も不幸な境遇に陥った者らしく取扱って、陰惨に聖書をひねくるのが、伸子には、惨めなような、恥かしいような堪らない心持なのであった。伸子は、自分の感情を制し、何も見なかったようにスープをすすめた。
「さ、熱いうちに召上れな。冷えたら、クックがクックだから仕方がなくなっちまってよ」
佃は、伸子の明るさを撥ねかえすような眼付で、寝台の上に起きなおった。黙って匙をとった。義務のようにスープを吸いながら、白眼のはっきりした神経質な視線を時々あげて傍の伸子を見た。
伸子は、何か自分が理由の分らない詰問でも受けているように窮屈を感じた。
「どうなすったの?――工合がよくないの?」
「いいや」
「――じゃあ気を引立てて召しあがれ、ね。あなたなんぞもう恢復期よ。何も滅入る必要なんかないのに。――平気でいる方がいいのよ」
「――有難う……おいしかった」
佃は皿をかえし、サーヴィエットで口のあたりをふき、云った。