Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
気に入らず幾度も破き、諦めて遂に彼女は簡単に要点だけ書くことにした。今度田舎へ来たのはこれをけじめとして互に別の生活に入りたいためであること、東京にいてそれを実行することも、彼に云うこともできなかった弱さを許して欲しいこと。
「このことは最初から私にだけ必要で、あなたにはちっとも必要の認められなかったことです。恐らく今でもそれはそうだろうと思います。けれどもどうぞ今度はおきき入れ下さい。そしてどうか互に憎み合わずにすむ関係になりたいと心から願います」
彼女は、書き終ってからも暫く二枚の書簡箋を眺めていた。感動しているのか、平気なのか自分ではっきりしない心の状態であった。伸子は念を入れてそれを揃え、畳み、封筒に入れ、自分で持ってポストへ入れに出かけた。
帰途上を仰ぎ見ると、空いっぱい夕焼であった。笹雲が彩り多く天の高みに浮いていた。稲妻が時々閃く。桑畑も杉の防風林も、はては遠い山脈まで耀きにうっとり溶けこんでいた。空気は透明でそよりともしない。体も心も自然にまかせて空を仰いでいると、ああ、やっとこれで重荷が下りたという心持がひしひしと迫り、伸子は、あたりの静けさ、広さ、美しさと遠くにいる素子とを一緒にだきしめ共によろこんで欲しいように感じた。