Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
が――寄宿の小さい部屋の中には、自分がいるばかりだ。彼女のすむのを待っている者も無いし、「ああやっと済んだ!」と、向って云う者もいない。化粧台の鏡は、明るく室内の白壁を写している。伸子は淋しい獣の仔のような顔をした。彼女は、もてあますように両方の腕を頭の上で組み合せ、窓の前へ立った。
とっぷり暮れた寒い夜を透して、同じ寄宿舎の、鍵のてに突き出した翼が見えた。灯のともった切抜万燈のように、沢山の窓があり、その内部は燈火で煌いている。カーテンの引いてない一つの窓から、凍ったような外気越しに、若い女の頭や、白い上衣の肩がちらちら見えた。どの窓の中も平和で暖かくて、人に知られぬ幸福が舞い降りているように見えた。伸子は突然、何でもよい、楽器でも、力一杯掻き鳴らし、自分を溺らすこの寂しさを破りたい衝動を感じた。彼女は寝台のはしに腰かけ、靴の爪先で拍子をとりながら、鼻唄を歌い出した。これが自分の声だろうか? こんな惨めな、弱い震え声が?
ぽつんと歌を切り、今度は雑誌をとりあげた。
伸子はしかし、やがてその抵抗力をも失った。彼女は、この心持は紛らそうとしても駄目なのを知った。