Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
広間では、愉快そうな男女が、あちらこちらに群れていた。夜会服をつけた娘が三人、花束のようにかたまって、嬉しそうに恥かしそうに、人中を抜けて出て行った。黒い服をつけた監督の老嬢が、隅の大理石柱の下に、活々したさざめきを眺めながら、つくりつけた微笑を湛えて坐っている。
伸子は、電話箱へ入った。彼女は、若し誰かに、何処かへ招かれるのだったら断ろう、と思いながら受話器をとりあげた。
「もし、もし」
「佐々さんですか、すぐそちらへつなぎますから」
カカカと接続の音がした。
「もしもし」
「もしもし……あなたは」
非常に不鮮明に、遠く途切れ途切れながら、一声聞くと、伸子は思わず、卓上電話の銀色に光る台を握りしめてのり出した。
「佃さん?」
「佐々さんですか? どうしておられます?」
伸子は、こみ上げて来る嬉しさと恋しさとで、口が利けなくなってしまった。やっと先方に聞えるくらいの声で彼女は、
「もしもし……もしもし……」
と囁きながら、動顛した熱い額を、ぐいぐい送話口に圧しつけた。
佃の声にも、優しさがあった。
「紐育のお天気はどうです? こちらはひどい吹雪ですよ――話が聴えますか」