Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

Leggi 光は影を (ひかりはかげを) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 138.262 caratteri · 276 schermate

Aozora Bunko

むろん、兄さまは、ご自分のことをまずお考えにならなきやね。そのあとで、ゆつくり……。あたし、うれしい、やつぱり、昔の兄さまだつたから……」

こう言つて、彼女は、兄の手を、なんのためらいもみせず、強く握つた。

京野等志は、すこし照れて、その手を大きく振り、内心、この妹から、「昔の兄」と云われる理由を不審に思いながら、

「まあ、まあ、お互いに暢気にやろうよ。ところで、美佐の奴は、いつたい、なにをしでかしたんだい?」

と、彼は、不吉な予感を、さりげなく、微笑でかくしながら訊ねた。

「美佐ちやん、今年の春から、愛人ができて、いま一人でアパートに住んでるの。その愛人には、妻子があるの。美佐ちやんは、それを承知なのよ。でも、そのことがお父さんの耳にはいつたもんだから、まあ、この家にいられなくなつたつていうわけ……。お父さんは、そういう問題にぶつかると、からつきしダメなのよ」

彼は、それを聞いて、たゞ、軽くうなずいた。

「母さんは、どうなんだ」

「母さんは、お父さんの顔色を見るだけ、自分には発言権はないと思つてるの」

「でも、ちよつと愉快じやないか。美佐にそんなひたむきなところができたのかねえ。