Classici giapponesi con furigana
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ほうがんさぶろうのしょうたい
判官三郎の正体
野村 胡堂
Leggi 判官三郎の正体 (ほうがんさぶろうのしょうたい) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.587 caratteri · 25 schermate
六
「アッ」
という間もありません。
この客間は、武蔵野と富士山の眺望を取り入れて、特別に四階に作った第二の小サロンで、その上が屋根下の物置、その上がもう屋上庭園の、古城型になった胸壁に続いて居るのです。
窓から出て居る四つの顔を嘲けるように、若い教授の身体は目にも止まらぬ早業、両樋を攀じ、出張りを伝わり、六十尺の上を平地の如く歩んで、二つ三つ勇躍すると、その姿はもう屋上庭園の胸壁の中へ隠れてしまいました。
六
「オ茂さん」
「お鶴、無事だったかい」
ブルに追いすくめられて、生きた心地もなく胸壁の隅に踞まって居た娘は、思わず若い教授に飛び付いて、その首っ玉に噛り付きました。
「私ゃア、おっかない」
脅えた小鳩のように、ワイシャツの胸に犇々と丸い頬をもみこみます。つぶらな黒い眼、物に脅えてこそ居りますが、それは、この世の女人のものにしては、あまりに純潔です。
「もうエエぞ、心配するな。設計図を取り返す用事さえ無けりゃ、こんな邸へ寄り付くこっちゃ無い。お前を送って、私も山の中へ帰ろう、もう二度と東京へなんか出る気になってはいけないぞ」
「お前さん本当に山の中サ帰る気かエ」