Classici giapponesi con furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Leggi 吸血鬼 (きゅうけつき) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 190.554 caratteri · 381 schermate
倭文子は手を引かなかった。
二人はお互の顔を見ぬ様にして手の先だけに心をこめて、長い間お互の温かい血を感じ合っていた。
「アア、とうとう……」
青年が歓喜に燃えて囁いた。
倭文子は涙ぐんだ目に、遙かなる憧れの色を湛えて、艶やかにほほ笑むのみで一言も口を利かなかった。……
丁度その時、アア何ということだ。廊下に惶だしい人の足音、ガラリと開く襖、そして、ヌッと現われたのは、さい前立去ったばかりの岡田道彦の、不気味にも殺気走った顔であった。
這入って来た岡田道彦は、二人の様子を見て取って、ハッと立ちすくんでしまった。
数秒間、気拙い睨み合いが続いた。
岡田は何故か這入って来た時から、右の手をドテラのふところへ入れたままだ。ふところに何かを隠している様子である。
「今、永久のお別れだといって出て行った僕が、なぜ戻って来たか、お分りになりますか」
彼は真青な顔を醜く引つらせて、ニタニタと笑った。
三谷も倭文子も、この気違いめいた態度を、どう考えてよいのか分らず、黙っていた。
不気味な沈黙が続く間に、岡田の全身が二度ほど、びっくりする程烈しく痙攣した。が、やがて彼の笑い顔が、徐々に、みじめな渋面に変って行った。