Classici giapponesi con furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Leggi 吸血鬼 (きゅうけつき) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 190.554 caratteri · 381 schermate
子供が、とうとう耐え難くなって、それをいい出したのは、決して無理ではない。
「ほしいといっても、ここにはなんにもありはしないわ。いい子ですわね。今に、今に、天国へ行けば、どんなおいしいお菓子だって、果物だって、どっさりありますわ。もう少しの我慢よ」
「そんなものじゃないの」
茂は怒った様な調子である。
「でもお腹が減ったのでしょう。喉が渇いたのでしょう」
「ウン、あのね、母さまのお乳のみたいの」
茂ははずかし相に、やっとそれをいった。
「マア、お乳なの。……母さま、笑いはしないことよ。いいとも。さあお上り。少しはひもじさを忘れるかも知れないわね」
狭い真っ暗な棺の中で、頭や肩をゴツゴツぶっつけながら、茂はやっと母の乳房にすがった。
彼はまだ、乳の飲み方を忘れてはいなかった。乳頸を柔かい舌で巻つけて、チュウチュウと、出もせぬ乳を、おいしそうに吸い始めた。そして、一方の手では、あいている方の乳房を、クネクネとひねくり廻しながら。
倭文子は、久しく忘れていた、両の乳房の物なつかしい感触に、ふと夢見心地になって、現在の恐ろしい境遇も打忘れ、我子の背中を撫でさすりながら、低い悲しい声で、昔々の子守歌を歌い出した。