Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あにきのようなこころもち

大川の水・追憶・本所両国 現代日本のエッセイ

芥川 竜之介

Leggi 大川の水・追憶・本所両国 現代日本のエッセイ (あにきのようなこころもち) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.007 caratteri · 56 schermate

Aozora Bunko

飯田蛇笏

或木曜日の晩、漱石先生の処へ遊びに行っていたら、何かの拍子に赤木桁平が頻に蛇笏を褒めはじめた。当時の僕は十七字などを並べたことのない人間だった。勿論蛇笏の名も知らなかった。が、そう云う偉い人を知らずにいるのは不本意だったから、その飯田蛇笏なるものの作句を二つ三つ尋ねて見た。赤木は即座に妙な句ばかりつづけさまに諳誦した。しかし僕は赤木のように、うまいとも何とも思わなかった。正直に又「つまらんね」とも云った。すると何ごとにもムキになる赤木は「君には俳句はわからん」と忽ち僕を撲滅した。

丁度やはりその前後にちょっと「ホトトギス」を覗いて見たら、虚子先生も滔滔と蛇笏に敬意を表していた。句もいくつか抜いてあった。僕の蛇笏に対する評価はこの時も亦ネガティイフだった。殊に細君のヒステリイか何かを材にした句などを好まなかった。こう云う事件は句にするよりも、小説にすれば好いのにとも思った。爾来僕は久しい間、ずっと蛇笏を忘れていた。

その内に僕も作句をはじめた。すると或時歳時記の中に「死病得て爪美しき火桶かな」と云う蛇笏の句を発見した。この句は蛇笏に対する評価を一変する力を具えていた。