Classici giapponesi con furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Leggi 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 209.260 caratteri · 418 schermate
(いや、祖母さまは、いなくはない……。たしかにいる)
と、いう考えが、ぽかと、夏雲のように、胸にうかんで来た。
(……どこに?)
と、眼をひらいて、眼のあたりの台座にすわっている鎌倉期の仏さまの、伽藍の天井をつきぬくばかりな、高いおすがたを見あげてみた。
――どこかお顔が似ていらっしゃる。
けれど、かれが心のうちに見つけた祖母は、それでもなかった。
ふたたび眼をとじた時、なおはっきりと、ありかをつきとめた。
(あ、祖母君はいる。なくなったのは、おすがただけだ。ここにいる! ……ここにいた!)
そう知ると、かれは、とめどもなく膝になみだを垂れた。
衆僧の読経が終る。
焼香の順がくる。
父をのぞいては、誰よりもかれが先であった。兄なるひともあったが、その頼重をおいて、かれは幼少の時すでに、水戸家の世子と定められていた。
(光圀。立たぬか)
父に促されて、
(……はい)
あわてて涙を横にこすった。面伏せに、焼香をすまし、座にもどった。
いつになく、しおらしい。
父の頼房が、あとで、
(なにを悲しむか)
と、夜も無口でいるかれを、人なき僧院のひと間でとがめた。
(悲しむのではありません)