Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いきふどう

橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇

橘 外男

Leggi 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.400 caratteri · 387 schermate

Aozora Bunko

どこかで若い女の忍び泣きの声が妙に籠った低い調い調子でこの人気のない山の奥からポソポソと聞えてきたのであった。ハッとして私はあたりを見廻したが、別段その辺に何の姿とても見えはしなかった。一際明るい夕方の光線の中に浮き出て、幾つかの墓の表が青白く輝いているに過ぎないのであった。気の迷いかとまた何気なく袴の塵を払っている時であった。今度は低いながらも前よりは一層明瞭に紛う方なく女の啜り上げているばかりではなく、咽びながら何か途切れ途切れに掻き口説いているような若い女の含み声が洩れてきたのであった。それに続いて靨え付けるようにブツブツ呟いているらしい老人の声が判然と私の耳を打ってきた。

一瞬、私は竦んだようにそこに突っ立っていた。今も言った通り、そこはこれまでに幾度何遍となく来ていても、ただの一度も人っ子一人に行き逢ったこともない寂寥極まるところであった。しかもその静寂な場所もあろうに、今この晩春の黄昏時ほどなく陽もとっぷり暮れ果てようという頃おいに、こんな不思議な咽び泣きや人の言い争う声などが聞えてこようとは夢にも予期できぬことであった。私ば何とも言えぬ異様な気持を感じながら、全身を耳にしつつなるべく音のせぬよう、ゆっくりゆっくりと塵を払っていた。