Classici giapponesi con furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Leggi 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.400 caratteri · 387 schermate
父そして涼子の亡った夫の名前であったろう。
墓は反り骨に三つ扇の定紋を扉に打った鉄柵に囲まれて、こんな荒れ果てた山寺の墓地には珍しく大理石の四辺を圧するばかりに堂々たるものであったが、ただ一つどうしても私の胸に合点の行かなかったのは、こないだあの老爺が現にあれほどせっせと掃除をしていたにもかかわらず、今見れば塋域は荒れ放題に荒れていることであった。
落ち葉はじめじめと朽ちて厚く散り重なって、白茅青萱の足の踏み場もないまでにはびこり放題蓬々とはびこっていた。しかもこないだあの三人連れは確かに重い鉄扉の錠前をガチャガチャと懸けていたにもかかわらず、今見ればそれは風雨に曝されてここ何カ月も手を触れたこともないらしく、緑青を吹いて錆ついていた。
私はしばらく茫然として、狐に誑かされたような気持で突っ立っていたが、いくら見廻してもこないだの三人連れが泣いていたのがこの墓であることにはなんの間違いもなかった。
私はまた鉄扉に靠れて眺めるともなく墓の表に眼を注いでいたが、その夫らしい人の歿した年代なぞを凝乎と繰ってみると、私にはあの天才を称えられた一代のピアニストが惜しまれながらも何故突然にステージを去ってしまったかが、おのずから頷かれてくるような気持であった。