Classici giapponesi con furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Leggi 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.213 caratteri · 325 schermate
「また、そんな弱音を吐くのか」
「と、言われちゃ、少し心外だが、考えてもみろ、若年からいろいろお世話になっている恩師の江漢先生のご子息が、いくら大悪党だって、貴様、イザとなって、縛れるか」
「それは俺も、自分が錆槍で抉られるよりも辛く考えているのだが、捕縄十手は飽くまで正大公明でなければならぬ。いわば、神の裁罰に代って人間がお預りしているものだ。私情に囚われてはなるまいと覚悟をしている」
「そんな講釈は、おれだって知っているが、いくら法縄をつかむ職業でも、やはり人間は人間だ、泣くなといわれても、泣かずにいられるか、貴様あ」
「おられまい、恐らくおれまい! 殊に、老先生の胸中を思うと」
「それ見ろ、貴様だって、血はあるだろうが」
「しかし、やはり、裁きは裁きだ。おれたちは、天に代る、征悪の使徒だ。貴様も、小さな私情に負けてはならんぜ」
「おれは苦しい。何という、いやな職業を択んだのだろう」
「そう考えるから辛いのだ、弱いのだ、天の使徒! 征悪の使徒! そう思うんだな」
ぎょッと、二人は何かの物音に、本能的に立ち上がった。――と、すぐにその気配が、大きな音響になって、二人の耳を衝った。