Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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すさのおのみこと

素戔嗚尊

芥川 竜之介

Leggi 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 42.917 caratteri · 86 schermate

Aozora Bunko

が、その時すでに大きな桶は、炎の空に風を切って、がんと彼の頭に中った。彼はさすがに眼が眩んだのか、大風に吹かれた旗竿のように思わずよろよろ足を乱して、危くそこへ倒れようとした。その暇に相手の若者は、奮然と身を躍らせると、――もう火の移った簾を衝いて、片手に剣を提げながら、静な外の春の月夜へ、一目散に逃げて行った。

彼は歯を喰いしばったまま、ようやく足を踏み固めた。しかし眼を開いて見ると、火と煙とに溢れた家の中には、とうに誰もいなくなっていた。

「逃げたな、何、逃げようと云っても、逃がしはしないぞ。」

彼は髪も着物も焼かれながら、戸口の簾を切り払って、蹌踉と家の外へ出た。月明に照らされた往来は、屋根を燃え抜いた火の光を得て、真昼のように明るかった。そうしてその明るい往来には、部落の家々から出て来た人の姿が、黒々と何人も立ち並んでいた。のみならずその人影は、剣を下げた彼を見ると、誰からともなく騒ぎ立って、「素戔嗚だ。素戔嗚だ。」と呼び交す声が、たちまち高くなり始めた。彼はそう云う声を浴びて、しばらくはぼんやり佇んで居た。また実際それよりほかに、何の分別もつかないほど、殺気立った彼の心の中には、気も狂いそうな混乱が、益々烈しくなって居たのであった。