Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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すさのおのみこと

素戔嗚尊

芥川 竜之介

Leggi 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 42.917 caratteri · 86 schermate

Aozora Bunko

」

彼がこう名乗った時、大気都姫は驚いた眼を挙げて、今更のようにこの無様な若者を眺めた。素戔嗚の名は彼女の耳にも、明かに熟しているようであった。

「では今まではあの山の向うの、高天原の国にいらしったのでございますか。」

彼は黙って頷いた。

「高天原の国は、好い所だと申すではございませんか。」

この言葉を聞くと共に、一時静まっていた心頭の怒火が、また彼の眼の中に燃えあがった。

「高天原の国か。高天原の国は、鼠が猪よりも強い所だ。」

大気都姫は微笑した。その拍子に美しい歯が、鮮に火の光に映って見えた。

「ここは何と云う所だ?」

彼は強いて冷かに、こう話頭を転換した。が、彼女は微笑を含んで、彼の逞しい肩のあたりへじっと眼を注いだまま、何ともその問に答えなかった。彼は苛立たしい眉を動かして、もう一度同じ事を繰返した。大気都姫は始めて我に返ったように、滴るような媚を眼に浮べて、

「ここでございますか。ここは――ここは猪が鼠より強い所でございます。」と答えた。

その時俄に人のけはいがして、あの老婆を先頭に、十五人の若い女たちが、風雨にめげた気色もなく、ぞろぞろ洞穴の中へはいって来た。