Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

Leggi 青べか物語 (あおべかものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 160.961 caratteri · 317 schermate

Aozora Bunko

芦の中の一夜

――気流のいたずらだな。

私はそう思った。密度の異なる気流の層が交わると、一種の蜃気楼に似た現象を起こす、といったようなことを読んだ覚えがある。その夜は気温が高く、梅雨どきらしく蒸していたが、ときどきひんやりした微風が吹いて来た。おそらくそんな気象状況がそういう現象を見せるのであろう。事実は留さんの云ったとおり、どじょうを捕るカンテラ火で、数も七つか八つにちがいない。眼に変化して見えるのは虚像なのだ、私はそう思ったが、誰にも話すつもりはなかった。

「いいかげんにしろよ、吉」と末吉エンジが云った、「留さんをからかったって一文にもなるわけじゃなかんべえに」

彼は狐火にさえ関心がないらしい。ずっと碁盤の上をみつめていたらしい眼を、ゆっくりとあげて私に云った。

「先生の番だよ」

芦の中の一夜

たぶん九月だったと思う、私は「青べか」を漕いで、堀を東の浜へ出た。その浜にはまえに書いた海水浴場があるし、海へ出るまでの浅い水路はごかいを捕る場所になっていた。ごかいはもちろん魚を釣るのに使う餌で、浅瀬の砂の中に棲んでい、月に五回、「砂を抜けて海へ出る」という。そのためごかいというそうであるが、学問的に正しいかどうかは知らない。