Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

Leggi 青べか物語 (あおべかものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 160.961 caratteri · 317 schermate

Aozora Bunko

なんのふぜいもない、だだっ広いだけのその荒地のほぼ中ほどに、無人の、小さな、毀れかかったような古い社が、ひねこびた六七本の松に囲まれて建っている。いつのころかたいへん流行った弁天で、特に各地の花柳界の女性たちが参詣に列を作ったそうである。どういう霊験があったのか土地の者は知らない、ただひところばかげて流行り、夥しい参詣者の絶えなかったことと、当時その境内が別世界のように賑わったということだけは、子供たちでさえよく知っていた。

潮の匂いのする強い風に吹かれながら、沖の弁天のほうへ歩いていたとき、うしろからいきなり大きな声で呼びかけられ、私はとびあがりそうに驚いて振り返った。あの老人がすぐうしろにいた。継ぎはぎだらけの、洗い晒しためくら縞の半纏に、綿入の股引をはき、鼠色になった手拭で頬かぶりをしている。それはこの土地の漁師たちに共通の常着であるが、もう綿入の股引をはく季節ではなかった。

「おめえ舟買わねえか」と老人は私と並んで歩きながら喚いた、「タバコを忘れて来ちまっただが、おめえさん持ってねえだかい」

私はタバコを渡し、マッチを渡した。老人はタバコを一本抜いて口に咥え、風をよけながら巧みに火をつけると、タバコとマッチの箱をふところへしまった。