후리가나로 읽는 일본 고전
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
小出 楢重의 小出楢重随筆集(ならしげざっぴつ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 334,351자 · 657화면
少しも走る必要がなかったのは結構だった。私は会場前の椅子へ腰をおろして、私のトランクが宿の六畳の間で黒煙に包まれているのを私の心眼という奴に照して遥かに眺めていたものであった。
そのトランクの中にはまだ作ってから二、三度以上も着たことのない洋服や、私がドイツで買ったところの愛用の写真機もあった。そのレンズが火焔で溶解している有様なども私は考えた。
そして、この大騒動、大混乱に遭遇しながら、少しも走らずにすむという運命は、何と幸せに恵まれた心臓だろうと思った。
ところで、このような異変や騒動がなければ、僧帽弁は常に安泰かというに、なかなかそうは行かない。あらゆる嬉しいことや幸福や遊戯でさえも、多少とも胸の躍るものばかりだといっていいかも知れない。概して幸福は心臓を昂進させる。
例えば、ふと紅の封筒が自分のポケットから飛び出したとしたら、忽ち血行は変調を来たすであろうし、電車の中で美人の視線といささか衝突してさえも、直ちに逆上して脈膊に影響を来たす位のものである。従ってそれ以上の幸福が飛び出したらまったく私の心臓は止まってしまうかも知れない。あまり結構な幸福が私を訪問しないのも、一重に神仏のお慈悲からかも知れないと思う。