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えどげいじゅつろん
江戸芸術論
永井 荷風
永井 荷風의 江戸芸術論(えどげいじゅつろん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 85,130자 · 167화면
文政天保時代において画家北斎が文学者馬琴とその傾向を同じうし共に漢学趣味によりてその品位を高めしが如く、芳年は王政復古の思想に迎合すべく菅公楠公等の歴史画を出して自家の地位を上げたり。さればその画風の夙に北斎に倣ふ処ありて一種佶屈なる筆法を用ひしもまた怪しむに足らず。余は芳年の錦絵にては歴史の人物よりも浮世絵固有の美人風俗画を取る。風俗三十二相(三十二枚揃ひ)は晩年の作なれどもその筆致の綿密にして人物の姿態の余情に富みたる、正にこれ明治における江戸浮世絵最終の俤なりといふべし。
明治二十五年芳年は多数の門人を残して能くその終を全うせしが、その同門なる芳幾は依然として浮世絵在来の人物画を描きしの故か名声漸く地に落ち遂に錦絵を廃して陋巷に窮死せり(明治三十七年七十三歳を以て歿す)。然れども今日吾人の見る処芳幾は決して芳年に劣るものならず。もし芳年を団十郎に比せんか芳幾は正に五世菊五郎なるべし。余は芳幾の春色三十六会席その他において、明治年間に残りし江戸狭斜の風俗に接する事を喜ぶ。また役者絵の中西洋写真の像より思ひ付きて俳優似顔をば線を用ひずして凡て朦朧たる淡彩の色を以て描きしはその奇異なる点まさに寛政の写楽が似顔絵に比するも過賞にあらざるべし。