후리가나로 읽는 일본 고전
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
岸田 国士의 火の扉(ひのとびら)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 129,467자 · 257화면
東京でなら、こんな現象もさほど驚くに当らないと思う習慣がついていたけれども、地方の小都市では、すべてがもつとつゝましく行われるものと思いこんでいた彼は、自分の認識不足か、それとも時代の急変か、どちらとも判断がつきかねた。が、よく考えてみると、しばらく郷土をはなれて異国の風物にとりまかれ、しかも軍隊という単純な生活のなかに身をおいた数年間のうちに、彼のすべての記憶が色あせてしまつたのだということに気がつく。
それにしても、某々映画俳優の実演が呼びおこすこの現象は、たゞ、美ぼうの女優がもつ人気というだけで説明がつくだろうか?
彼は行列のなかに知つた顔がみえはせぬかと、前から後のほうへ順番に首実検をした。いる、いる。視線があうと、向うから笑いかけ、照れたふうで「おう」とか、「やあ」とか言う。みな、働き盛りの若者だ。おまけに、数里の道を山越しで出かけて来たものもある。
「えらく熱心なもんだなあ」
と、彼は、その一人へ冷やかす気でなく言う。
「うゝん、ちよつと、ついでがあつたで」
その隣で、明らかに連れと思われる少女が、ショールで顔をかくした。
市ノ瀬牧人は、こつちがそこで不覚にもほおを熱くして、さりげなく列をはなれる。