후리가나로 읽는 일본 고전
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
岸田 国士의 火の扉(ひのとびら)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 129,467자 · 257화면
の名が叫ばれていた。
田辺の町へは昨夜おそく着いて、船はもう沖へはいつていることをたしかめ、夜の明ける前にさん橋のたもとに立つていた。検疫でしばらく暇がかゝることを告げ知らされたのは、昼近くであつた。用意して来た握り飯をひとつたべた。それから町をぶら/\歩いた。墓地のそばを通りかゝつた時、ふと新しい墓標に戦死者の名があざやかに記されてあるのが目についた。――あゝ、そうだ、と、彼女はとつさに思いついた。葬儀屋をさがした。店の主人のいぶかるのもおかまいなく、自分で筆を借りて一枚の卒塔婆へ「旭一三六二四部隊云々」と書き、拾円札二枚を投げ出すようにおいて、飛び出して来た。
が、その効き目もついになさそうである。
日が暮れようとしていた。
さん橋には人影はまばらである。
見張りの警官に、――もうこれで全部上陸したのかとたずねてみたが、「わからん」という返事である。
復員者相談所というのへ行つてみる。倉庫の一部を事務所風にした建物であつた。事務所に続いた広い板敷の部屋にはまだうよ/\人影が動いていた。隅々にはじつと動かぬひとかたまりもみえた。一種異様の臭気が鼻をついた。