후리가나로 읽는 일본 고전
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まきのとみたろうじじょでん
牧野富太郎自叙伝
牧野 富太郎
牧野 富太郎의 牧野富太郎自叙伝(まきのとみたろうじじょでん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 94,045자 · 185화면
それは外でもないがこの待合は私自身が開業したものではなく、これは長谷川君のいわれた通り私の妻がやった事であって、その店は私とは世帯が別になっていた。故に私は待合の家には住まっていなかった。そしてこの事件は勿論今日の事ではなくて最早や今から二十七年も前の大正十年頃の出来事である。私の妻が事もあろうに何ゆえこんな恥も外聞も構わぬ大それた芸当をしたのかというと、それは当時私一家が貧乏のどん底に陥っていたので早く金を得て焦眉の急を救い、我が家の経済を立て直さんとするのが唯一の目的であって、それには待合が一番早く金を得るのに都合がよいとの事でこれを選んだわけだ。そして妻は素人ながらも待合業を経営するぐらいな天才的手腕は持合せていた。故に何の臆するところなく大胆にその業をはじめ、渋谷花柳界での荒木山に妻の姓〔別姓〕である「今村」の看板を掲げたのであったが、その後故あって廃業して仕舞い一場の昔譚を今日に残したその妻も今は疾く亡き人の数に入った。
右待合を開いた時、私の窮状に非常に同情して下さったのは人情味豊かな大学理学部長の五島清太郎博士であった。なお且つ当時同大学のその他の人々も敢て私の事を問題にしていなかった。