후리가나로 읽는 일본 고전
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選(ひだのかいだん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 130,271자 · 263화면
お杉は黙って其背後に突っ立っていた。
低い狭い石室の中は、墓場のように鎮り返っていた。が、其の寂寞は忽地に破られた。市郎は我が背後で微に物の動く気息を聞いたので、何心なく顧ると、驚くべし彼のお杉婆は手に磨ぎ澄したる小刀を振翳して、あわや彼を突かんとしているのであった。
「何をするッ。」
市郎が驚いて叫ぶ間もありや無しや、お杉の兇器は其の頸筋へ閃いて来た。が、咄嗟の間に少しく体を躱したので、鋭い切尖は僅に其の肩先を掠ったのみであった。空を撃ったお杉は力余って、思わず一足前へ蹌踉く機会に、恐く岩角に蹉いたのであろう、身を翻えして穴の底へ真逆さまに転げ墜ちた。蝋燭は消えて真の闇となった。
意外の出来事に市郎も一時は呆気に取られたが、お杉が自分を殺そうとしたのは、恐く昨日の復讐ばかりではあるまい。彼女は此の岩穴の中に何等かの暗い秘密を蔵しているので、其の発覚を恐れて斯る兇行を企てたに相違ない。矢はり自分が最初に疑っていた通り、生死不明の父は此穴の底深き処に葬られているのかも知れぬ。それにしても、お杉は何うしたろう。岩石に骨を砕かれて即座に命を隕したか、或は案外の軽傷で無事に生きているか、先ず其安否を確めねばならぬ。