후리가나로 읽는 일본 고전
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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
江戸川 乱歩의 孤島の鬼(ことうのおに)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 181,795자 · 359화면
随分悲しい長い間です。その間のことを、思い出し思い出し書いて見ようと思います。そうすれば私の不幸がみんな書けるに違いないのです。
子供は母の乳を呑んで大きくなるものだそうですが、私は悲しいことに、その時分のことを少しも覚えていないのです。母というのは女のやさしい人だということですが、私には母というものが、少しも考えられません。母と似たもので、父というのがあることも知ってますが、父の方は、あれがそうだとすると二三度逢ったことがあります。その人は、「わしはお前のお父つぁんだよ」と申しました。怖い顔の片輪者でした。
〔註、ここにある片輪者とは、普通の意味の片輪者に非ず。読進むに従い判明すべし〕
私が一番初めに覚えているのは、今から考えると、四歳か五歳の時のことでしょうと思います。それより前は、真暗で分りません。その時分から私は、この四角な壁の中に居りました。厚い壁で出来た戸の外へは、一度も出たことがありません。その厚い戸は、いつでも外から錠がかけてあって、押しても叩いても動きません。
私の住んでいる四角な壁の中のことを、一度よく書いて置きましょう。長さの計り方をハッキリ知りませんから、私の身体の長さを元にして云いますと、四方の壁はどれでもおよそ私の身体の長さを四つ位にした程あります。