후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 167,285자 · 330화면
甲斐は断崖の途中で立停り、その古い樫や、崖に貼りついている蘚苔や、歯朶などを眺めやった。
崖にはところどころ、岩の割れ目に水が涌いていて、北向きであるために、そこは真夏でも陽のさすことがなく、いつもじめじめしているし、ひんやりと涼しかった。いまは寒さがきびしく、涌き水は氷って、つららが垂れているし、歯朶類は枯れて、みじめにちぢれた葉が、川から吹きあげる風に、音もなくふるえていた。甲斐はそれらを、なつかしそうな、ひそかになにか呼びかけるような眼で、ゆっくりと眺めまわし、それから、川へおりていった。
広瀬川はそこで凹字なりに曲流していた。御霊屋のある丘陵が突出ていて、川は南東から来てその丘陵をめぐり、西南へと流れるのであった。川幅はそこでもっとも広くなるが、いまは水の少ない季節で、広い河原のあいだを、細い流れを合したり離れたりして、それでも、瀬のあるところでは、白く泡立ち、爽やかな音をひびかせていた。
御裁許役所の少し手前に、水の深い淵があった。甲斐はそこへいって、釣りの支度をし、乾いた流木に腰をおろして、糸を垂れた。
対岸の丘陵は松林が繁っていて、御霊屋は見えない、丘の下には小人衆の家が並んでおり、そこから炊ぎの煙がたち昇って、丘の中腹まで、靄がたなびいているように見えた。