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あすなろう
あすなろう
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1960(昭和33)年8月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,925 字 · 41 页
と彼は手酌で一つ呷って続けた、「うちで綿の厚い蒲団にくるまって寝るより、そうやって物置なんぞで寝るほうがおれにはうれしかったんだ、――おやじもおふくろもいい人だったし、兄貴や妹たちもいいきょうだいだった、ところがおれだけはそんな性分で、それをどうしようもなかった、自分で自分がどうにもならなかったんだ」
「わかるよ」と政がまじめに頷き、大事そうに盃の酒を舐めた、「それじゃあ岡っ引が嫌えな筈だな」
「十四の年にうちをとびだした」と文次は云った、「それからこっち、岡っ引とか十手なんぞがむやみに憎くなった、悪い事をする人間はある、だがたいてえは気の弱いやつか、どうしようもなくってやっちまうんだ、やったあとでは自分で自分の骨を噛むほど後悔するんだ、おめえだってそうだろう」
政は黙って自分の盃を見まもっていた。
「気違えはべつだ」と文次はなお続けた、「しかしまともな頭を持っていて、それでも悪い事をする人間は可哀そうなんだ、悪い事をするたんびに、十手で殴られ捕繩で縛られるより、もっともっと自分で自分を悔んでるんだ、――おれだってまともな性分に生れたかったよ、あたりまえに女房を貰って家を持ちてえ、一日の仕事から帰ると湯へいって汗を流し、女房子といっしょに晩めしを喰べてえ、それが人間に生れて来