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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
春がくると渓流の畔に、山独活の芽がふくらむのだが、穴から出た熊はこれが大好物で終日食っている。そして、青い糞をたれる。しかし、糞はあちこちと勝手にやるのではない。一定の場所に、山のように溜め糞をする。つまりこれが、その溜め糞だ。
この溜め糞の存在から推測して、熊の住まいは遠くあるまい。一体、この鬼の押し出しという岩は、火石からできていて、なかに縦横無尽に穴が通じてある。いわば、その穴は獣類のアパートみたいなものだ。
熊をはじめ、そして狸、野狐、貉、穴熊など、数知れぬほど棲んでいる。
「きょうの山女魚釣りは、これまで」
仁王さまのように逞しい案内人も、いよいよ観念したらしい。怖じ気がつくと、なんとなく追われるような気持ちがする。
二人は、急いでもときた渓畔を下流の方へ下り、先刻の砂の河原のところへ出て、対岸の芒原の丘を望むと、いた。
四
枯れ芒のなかから、背中だけ出していたのであるから、よほどの大物にちがいあるまい。体を東南に向け、首だけ西南へ向けて、凝乎と私らをにらんでいる。ところが私らが渓の岸に踏み止まった瞬間、熊のやつ、くるりと体を翻すと同時に一目散に北方に向かって走り出した。