轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みずぐるま
みずぐるま
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,077 字 · 54 页
「ああ、――」若尾は眼をみはった、「あんたは、あんたは仙之丞のにいさんじゃないの」
「若ぼう、――やっぱりおめえだったか」
「あんたは権之丞のにいさんね」
若尾は殆んど叫んだ。それは岩本一座で綱渡りをする権之丞と、笠踊りの仙之丞であった。二人もなつかしそうに、微笑しながら若尾の姿を眺めたが、寄って来ようとはしなかった。
「無事にやってるらしいな」と権之丞が云った、「仕合せかい」
「ああよかった、江戸へ来て打ってたのね」若尾は二人のほうへ近よりながら云った、「どこなの、両国の広小路、それとも浅草の奥山、さあ、いっしょにゆきましょう、伴れてってちょうだい」
「いやいけねえ、それはだめだ」
「それはだめなんだ、若ぼう」と仙之丞も云った、「そんなことをしたら親方にどやされる。途中で見かけても声もかけちゃあならねえって云いわたされているんだ」
「あたしが薄情に出ていったからなの」
「若ぼうの身のためだからさ」と権之丞が云った、「おめえは薄情で出てったんじゃねえ、おめえが泣いていやがったことは、みんなが知ってるよ」
「そんなら伴れてって」若尾は云った、「あたしはお邸を出て来たの、ゆくところもないしお邸へ帰れもしないのよ」