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みずぐるま
みずぐるま
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,077 字 · 54 页
四
「ねえお兄さま、聞かせて、――」
若尾は、ちょっと声をひそめた。
四
「お母さまが仰しゃるんだと、若尾は亡くなったお姉さまに似ているんですって」こう云って彼女は和次郎の眼を見た、「――お姉さまがいらしったってことも、二年まえにお亡くなりになったということも、初めて今日うかがったんですけれど、若尾がその方に似ているからお貰いになったんですって、本当でございますか」
和次郎は強く眉をひそめた。
「それは母が自分から話したのか」
「ええ、――」と若尾は頷いた、「なぜ若尾を貰って下すったのかと、うかがったら、そう仰しゃっていらっしゃいました」
「断わっておくが、これからは姉の話は決してしてはいけないよ」と和次郎が云った、「母はひどく弱ってみえるだろう、もとは、あんなではなかった、姉の死んだことが、あんなにひどくこたえたんだ、この家ではその話はしないことになっているんだからね」
「はい、――わかりました」
「それから」と和次郎は続けた、「若尾は姉には似ていないんだ、谷口修理という私の友達がひどく似ていると云うし、父もよく似ていると云った、それで、母にもよかろうというので貰うことになったんだが、私には、ほかに考えることがあったんだよ」