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みずぐるま
みずぐるま
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,077 字 · 54 页
七
初めのうち若尾はその扱いかたに迷った。いつか緒方せいにやったように、徹底的にそ知らぬふうでうけながすか、それとも実力で降参させるか、どちらがいいか見当がつかなかった。そうしてやがて第二の手段をとることにきめ、それを遠慮なく実行した。本当のところはその手段よりも若尾の人柄のためのようだったが、弟子たちは、しだいに軽蔑的な態度をやめ、しだいにおとなしく服従するようになった。そして、その年の冬が来るまえに、若尾は自分の位地を慥かなものにした。
七
和次郎からは六月と八月と十月に手紙が来た。六月のは浜田への到着と、殿町という処に住居の定ったこと、八月のは父の平右衛門が病気になったこと、十月の手紙には松原という海辺に、父の養生所を賜わったが、その家は座敷から松原湾の美しい海が眺められる、などということが書いてあった。
若尾もむろん手紙を出した。彼女は仮名文字しか知らなかったし、思っていることをうまく表現する方法も知らなかったが、それでも、できるだけ正直にしっかりと、自分の暮しぶりや、周囲の出来事や、今なにを考えているかということなどを書いた。その幾通かのなかで「正直に」