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みずぐるま
みずぐるま
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,077 字 · 54 页
五
「あらいやだ、――あらいやですわ、もうわたくし、まさか子供じゃあるまいし、悪戯なんか致しませんことよ」
「それじゃあ、なんで怒られたんだ」
「お稽古がまどろっこしかったんです」と若尾は云った、「もう半月も経つのに薙刀の持ちかたばかりやかましくって、あとは型しか教えてくれないんですの、わたくし、いいかげんうんざりしてしまったから、もうそろそろお稽古を始めて下さいって云ったんです」
「あのかみなり婆さんにか」と和次郎は笑いだした、「それは驚いた、それは大した度胸だよ」
五
「そうしたらいきなり、わんわんわんって、こんな眼をしてどなるんです、およそ武の道に基礎ほど大事なものはない、基礎は精神のかためである、おまえのような者は型ばかりで三年かかると思え、わんわんわんって、わたくし耳が裂けちゃったかと思いましたわ」
「基礎は大切だよ」和次郎は笑いやめて云った、「ことに若尾は癖のある技を覚えてるんだから、それをすっかり毀して、かからなければならない、本当に三年かけるつもりで、基礎をしっかりやるんだよ」
若尾は少し考えてから大きく頷いた。
「はいわかりました、悪い癖をすっかり毀すようにやります、大丈夫きっとやります」