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ゆうれいかしや

ゆうれい貸屋

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,320 字 · 42 页

青空文庫

「そうか、そういうわけか、そうとは知らねえもんだから、いきなりこりゃこりゃなんてとびだすには、びっくらした」

「これからは気をつけてね、さあ起きて湯へでもいってらっしゃい、あたしそのあいだにここの支度をしとくから……はい手拭」

銭湯で汗をながして、さっぱりして帰ると膳拵えが出来ていた。鰺の酢の物にもろきゅう、烏賊さしにさよりの糸作り、そして焜炉には蛤鍋が味噌のいい匂いを立てていた。

「これあどうも、こいつあたいそうな御馳走じゃあねえか、おめえにこんな散財をさせちゃあ済まねえ」

「散財なんかしやしないわ、これみんな金田屋から持って来たのよ」

「えっ、金田屋、……二丁目のか」

「そうよ、板場で拵えたばかりのを持って来たのよ、お酒もたっぷりあるから、今夜はあんたも酔ってね」お染ゆう女は、例の眼で斜交いにこっちを睨んで、「あんたはいくらなにしても、すぐおじぎしちゃうんだもの、あれじゃあっけなくてつまんないわ、今夜は酔うのよ、酔えば息が長く続くから」

「そのことなら安心しねえ、ゆんべは遠慮があったし、二年ぶりのなんだったからよ、そうわかれあ、へっ自慢じゃあねえけれども、おめえなんざあ十日と経たねえうちにげっそりして、へとへとのゆうれえみてえに……ああいけねえ、おめえは今でもゆうれえだからな、するてえと、どんな寸法になるんだ」