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ゆうれいかしや

ゆうれい貸屋

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,320 字 · 42 页

青空文庫

家主の怒りは、頂点に達したらしい。

「そんな人情を知らねえやつは、顔も見たかあねえ、お兼さんにあ気の毒だがおらあ手を引く、米味噌も小遣もこれっきりだ、もう店賃もお兼さんからは貰わねえ、断わっとくが一つでも店賃を溜めたら敲き出すぞ、こんだあ承知しねえから、そのつもりでいろ」

かんかんになって、帰っていった。

弥六も、さすがにものが云えなかった。鼻が酸っぱくなるような気持だったが、しかしお染ゆう女を思い、ゆう女との夜毎の楽しみを思いだして、やがてふんと鼻先で笑った。

「へっ、なにょう云やあがる、大家だと思って、へっ、そうでございますかだ」

そして欠伸をして、ごろっと寝ころんだ。

その晩のことだ。お染ゆう女はすっかり聞いていたらしい、例のとおり現われると、いきなり弥六の胸ぐらへ掴みかかり、「この大嘘つき」「ろくでなし」「恥知らずのぺてん師」「おっちょこちょい」「唐茄子野郎」など、凄まじい勢いで罵しりたてた。

「まえの女房は追い出した、縁は切れたと云ったじゃないか、それをこの南瓜は」

「縁は切れてるんだ、嘘じゃあねえんだ、おれの知ったこっちゃあねえんだから」

弥六はけんめいに陳弁した。