轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ノア

ノア

久生 十蘭

「富士」1950(昭和25)年2月号~4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,285 字 · 153 页

青空文庫

右舷に島影が浮きだし、はげしい雨脚のむこうでぼうと滲んでいた。

サンダガンは夜で、雨後のほのかな空明りのほかなにも見えなかった。

山内は舷側に凭れ、久慈隊の後尾が離れるのを、これが自分の生涯で見る最後のまともな人間なのだと、感慨とともに見送った。これから行く島でどういう生活がはじまるのか。たぶん人間の生活のフレームをはずして、家畜か奴隷のレベルまで追いさげられるのだと思われる。それはもうわかっていた。

サンダガンを出帆してから二日目の正午、ブフルという島の東側の湾へ入った。西側に五百メートルほどの岩山がいきなり海から空へ立ちあがり、船から見ると、青銅の大鐘でも伏せたような奇異なかたちをしている。遠目にもなにかひどく乱脈な海岸のうしろの岩山は、いたるところに暗い谷間が口をあけ、雨季の名残りの霧が屍衣のようにぼんやりとまつわりついている。胸を締めつけられるような、見るからに沈鬱な島だった。

浜田隊の護送が完了すると、山内は海軍組の十四人と貨物廠の七人と込みに、受領者の大矢少尉の監視付で桟橋へあげられた。

沖のほうをふりかえると、ノアの一族を運んできた第二神路丸は、浅瀬の海から立ちあがるドロンとした真昼の霧に包まれて船体を霞ませ、島の主計科の兵隊が裾から火がついたような騒ぎをしながら貨物を卸下していた。