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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
あの道は、それと悟られぬ巧みな曲線を描いて、幾度も幾度もあと戻りをしているのだし、左右に見えていた果しも知れぬ杉の木立は、お前が信じた様に皆同じ様な大木ではなくて、遠くの方は僅か高さ一間程の、小さな杉の苗木の林であったかも知れないのだ。光線の按排によってそれを少しも分らぬ様にすることはさして難しい仕事ではないのだよ。その前に私達が昇った白い石の階段にしてもその通りだ。下から見上げた時は雲のかけ橋の様に高く見えて、その実は百段余りしかない。お前は多分気づかなんだであろうが、あの石段は芝居の書割りの様に上部程狭くなっている上に、階段の一つ一つも、気づかれぬ程度で、上に行く程高さや奥行きが短く出来ているのだ。それに両側の岩壁の傾斜に工夫が加えられている為に、下からはあの様に高く見える訳なのだ」
併し、その様な種明しめいた説明を聞いても、幻影の力が余りに強くて、千代子の心に記された不可思議な印象は少しも薄らぎませんでした。そして、現に目の前に拡がっている、無際涯の広野は、その果てはやっぱり地平線の彼方に消えているとしか考えられぬのでありました。
「では、この平野も実際はそんな風に狭いのでしょうか」