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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
それに、彼は生れつき、不思議とお芝居のうまい男でもあったのです。たった一人恐しいのは、細い所まで源三郎の癖を知っているに相違ない、当人の細君ですが、これとても、用心さえしていれば、取り分け夫婦の語らいという様なことを、なるべく避けていたならば、恐らく気づくことはないでしょう。それに、一度死んだものが生き返って来たのですから、多少容貌なり性質なりが変っていた所で、異常な出来事の為にそんな風になったものと思えば、さ程不思議がることもない筈です。
こうして彼の考えは段々微細な点に入って行くのでしたが、それらのこまごました事情をあれこれと考え合わせるに従って、彼のこの大計画は、一歩一歩、現実性、可能性を増して来る様に見えました。残る所は、これこそ彼の計画に取っての最大難関に相違ないのですが、如何にして彼自身の身柄を抹殺するか、又如何にして菰田の蘇生をほんとうらしく仕組むか、それにつけては本物の菰田の死体を如何に処分するか、という点でありました。
この様な大悪事を(彼自身如何様に弁護しようとも)企む程の彼ですから、生れつき所謂奸智に長けていたのでもありましょう。