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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
それは、この大森林の全形が、世にも異様なるある妖魔の姿を現していることです。非常に神経質に作為の跡を隠してある為に、それは極くおぼろげにしか見別ることは出来ませんけれど、おぼろげなればおぼろげな程、却ってその恐怖は深みと大きさを増している様に見えるのです。恐らくこの森は自然のままの森ではなくて、極度に大仕掛けな人工が加えられたものでもありましょうか。
千代子はこれらの風景を見るに従って、彼女の夫の源三郎の心の底にこの様な恐しい趣味が隠されていたとは、どうしても考えられず、今彼女と並んで何気なく佇んでいる、夫に似た一人の男を疑う心は、益々深まって来るのでありました。併し、彼女の異様なる心理を何と解すべきでありましょう。彼女は刻一刻深まって行く恐しい疑惑と同時に、それと並行して、一方ではそのえたいの知れぬ人物に対する思慕の情も又、益々耐え難きものに思われて来るのでありました。
「千代、何をぼんやりしているのだ。お前、又、この森を怖がっているのではないのかい。みんな私の拵えたものなんだよ。ちっとも怖がることなんかありゃしない。さあ、あすこの木の下に、私達の従順な召使が待兼ねている」